長い間姿を見せずにいた小舎人は(2)和泉式部日記を書いて

2.故宮との名残に

釈文:「『遠ざかるむかしの名残りにも思ふを』など言はすれば、『そのこととさぶらはでは、なれなれしきさまにや、とつつましうさぶらふうちに」

選字は「遠さ可 流無可し能奈故利爾裳思布毛なと 言波寸連八所農許とヽ散ふらは弖者 難連ヽヽしき佐万爾やと徒ヽましう さ婦らふう地に」

鑑賞:「むかしの名残り」は故為尊親王との思い出の残影。童をさす。「そのこととさぶらはでは」平安時代のかな散文では、こういう場合「侍り」を用いるが、下層の男性が「さぶらふ」を使うこともある。

大意は「遠くなる昔の故宮との思い出の名残に思っていたのに」と侍女に言わせれば、特別な用事もございませんのに伺うのは馴れ馴れしいと思いまして、と遠慮されるような気がしているうちに」

参考文献:和泉式部日記 和泉式部集 野村精一校注 新潮社