行きづまることと道が開けること(3)陶淵明・飲酒二十首其五より
3.宇宙ははるかに
釈文:「宇宙一何悠 人生少至百」
書き下し文は「宇宙 一(いつ)に何ぞ悠なる 人生 百に至ること少(まれ)なり」
鑑賞:「宇宙」宇宙。時間および空間をさす。「一何悠」何とはるかに果てしないことか。「一」は強調の語。「少至百」百歳まで生きるのはまれ。『列子』楊朱篇に「百年は寿の大斉にして、百年を得る者は千に一もなし」とある。
現代語にすると「宇宙の時間と空間は何とはるかに果てしないことか。人の一生は百歳まで生きることさえまれである。」
書の特徴:「宇宙」「宇」で墨を入れて、しっかりと打ち込み強調している。続く文字はやわらかく抑えて「人」は右の行へ働きかけている。下に「生少」を入れ、特に「少」は左へ長く伸ばして終画が印象的である。その少し右手に「至」をそっとおいて行の動きを出している。
参考文献:漢詩と名蹟 鷲野正明著 二玄社