俊成の歌道、誉高く(4)建礼門院右京大夫集から

4.夜通し拝見して

釈文:「よもすがらさぶらひて見しに、昔のことおぼえて、いみじく道の面目なのめならずおぼえしかば、つとめて入道のもとへ、そのよしもうしつかはす。」

選字は「夜毛須可ら散ふ 羅飛て見志爾昔農こと於本えてい三 し俱道農免无ほ久奈能め那ら春 於本えし可盤つと免弖入道農もと 遍處のよ志申し徒可者春」

鑑賞:「昔のこと」とは、昔の俊成に関することで、平氏都落ち直前の寿永二年(1183)二月『近古以来和歌』を撰進するよう後白河法皇の院宣が蔵人頭中将資盛の奉書で下された。これは第七番目の勅撰和歌集『千載和歌集』である。

俊成は抒情的歌風を『千載集』の基調とし、新古今的余情妖艶な美に連なっていく。
大意は、「夜通し拝見していたが、昔のことが思い出されて、大層歌道の誉もひととおりでなく思われたので、その翌朝入道のもとへ手紙を書いて送った。」

参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社
     日本大百科全書