隆房の中納言へ心置きなく歌を(5)建礼門院右京大夫集を書いて
5.心の闇を
釈文:「まよふらむ 心の闇を 思ふかな 豊のあかりのさやかなるころ」
選字は「満よ布ら無こヽ路農闇を於もふ可奈 豊乃あ賀りの沙や可那るころ」
鑑賞:「心の闇」は「豊のあかり」の縁から、ここでは親を思う子の気持ちの意味である。しかし、「人の親の心は闇にあらねども子を思ふ道にまどひぬるかな」『後撰集』藤原兼輔、から特に親が子を思って心が乱れること、の意に用いられることが多い。
歌意は「父君を亡くされた悲しみに、心が乱れていることとお察しいたします。宮中では豊の明りの饗宴が華やかに行われているころですのに。」
参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社