無理に忘れている昔のことを(4)建礼門院右京大夫集から
4.今はただ
釈文:「今はただ しひて忘るる いにしへを 思ひいでよと すめる月影」
選字は「今波多ヽ志ひてわ須るヽい耳事へ越 於も飛い弖よ登春免流つ支可遣」
鑑賞:作者が歌を贈った久我道宗の没年から推定すると、再出資は建久九年(1198)以前となる。建久六年とする説もあるが、退任以降、おおよそ二十年の隔てがある。
歌意は「今はただ、無理に忘れている昔のことを、思い出しなさいと言わんばかりに、澄み切った月の光であることよ。」
参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社