五節の行事に往時をしのぶ(1)建礼門院右京大夫集より

1.五節の声に

釈文:「五節の頃、霜夜の有明に、宮の御方の淵酔にて、白薄様などのこゑ聞ゆるにも、年々聞きなれしこと、まづおぼえざらむや。」

選字は「五節のころ霜夜農有明爾宮の 御方能淵酔耳天白薄様奈と乃 こ衛きこ遊流爾も年々聞ヽな連 し故と万徒お本江さら無や」

鑑賞:「五節」(遅・速・本・末・中声の五声の節の意)古代から朝廷で新嘗会・大嘗会に行われた少女祭の行事。儀式は毎年11月の中の丑・寅・卯・辰の4日にわたり行われた。

「宮」後鳥羽天皇の中宮、藤原任子。「淵酔」(えんずい)五節の試の翌日や臨時の大礼後などに、蔵人頭以下の殿上人を召して清涼殿などで歌舞・歓楽する酒宴。

参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社