後鳥羽帝付き女房として再び出仕し(4)建礼門院右京大夫集から
4.御殿は変わらずに
釈文:「御しつらひも世のけしきも、かはりたることなきに、ただ我が心のうちばかりくだけまさるかなしさ。」
選字は「御志つ ら比も世乃遣し記毛可は里多るこ登 難支二多ヽわ可心農う地盤可り具た介 ま佐る閑奈しさ」
鑑賞:「しつらひ」設けととのえること。飾りつけること。設備。この個所は、『徒然草』百六十九段(正徹本)に「建礼門院の右京大夫、後鳥羽院の御位のころ、またうちずみしたることをいふに『世のしきもかはりたることはなきに』とかきたり。」と引用されている。
「世のしき」は宮中の行事や作法。
大意は「御しつらえもあたりの様子も、変わったことはないのに、ただ私の心の中だけが粉々に思い乱れる悲しさといったら。」
参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社