後鳥羽帝付き女房として再び出仕し(3)建礼門院右京大夫集から

3.後鳥羽天皇方の

釈文:「また九重の中を見し身の契り、かへすがへすさだめなく、我が心のうちもすぞろはし。藤壺の方ざまなど見るにも、昔住みなれしことのみ思ひ出でられてかなしきに」

選字は「ま多九重の中(うち)越見しみ農遅き利 可邊寸〃佐多免奈九我可心の有ち も春楚ろ者しふ遅徒本の方沙ま奈 度見留耳毛昔須三奈連しこと能 みおも飛出てられ天可那志支に」

鑑賞:「また九重の中を見し身の契り」は後鳥羽天皇方の女房として再び出仕した我が身の運命の意。「すぞろはし」は「すずろはし」に同じ。なんとなく心が落ち着かない、の意味。

「藤壺の方」宮中五舎の一。かつて中宮徳子が住んでいたところか。

大意は、「再び後鳥羽帝の女房として使えた我が身の運命は、どう考えても定めがなく、心のうちも落ち着かない。藤壺の方などを見ても、昔住み慣れたことだけ思い出されて悲しいことに」

参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社