秋の野辺にもまさる涙の羽衣(2)建礼門院右京大夫集から
2.宵の間に出て
釈文:「よひのまに 入りにし月の 影までも あかぬ心や ふかきたなばた」
選字は「夜日の万耳い利志月の影ま弖毛あ 閑ぬ心や布可支た奈者堂」
鑑賞:「よひのまに入りにし月」は、陰暦の七日の月が宵月で、宵のうちに西の山に入ってしまうこと。月が入ると暗闇になり、語り合うのにも不都合であったし、いつ夜が明けるかと気がかりでもあった。
歌意は「宵の間に月が隠れてしまった月の光でも七夕の星はとても物足りなくなってしまうだろう。それでなくても年に一度の逢瀬でも飽き足りなく思っているのだから。」
参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社