秋の野辺にもまさる涙の羽衣(1)建礼門院右京大夫集より

1.空の曇るのさへ

釈文:「曇るさへ うれしかるらむ 彦星の 心のうちを 思ひこそやれ」

選字は「久裳流さへ有連し可留ら无 彦星能こヽ楼農う地を思ひこ曽やれ」

鑑賞:この歌は『拾遺集』よみ人しらず(恋二)の「いつしかと暮を待つ間の大空は曇るさへこそうれしかりけれ」意味は「あなたに逢いたくて早く暮れないかしらと待ちながら眺めている大空は、雲が広がるのさえ日が暮れたように思え、うれしくなってしまう」による。

歌意は「七夕の夕方には曇ることさえうれしく思うだろう、日暮れが近いと見えて。彦星の心中を思ってみることよ。」

参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社