秋の野辺にもまさる涙の羽衣(3)建礼門院右京大夫集から

3.はかない逢瀬も今は

釈文:「七夕の 契りなげきし 身のはては 逢ふ瀬をよそに 聞きわたりつつ」

選字は「七夕の契り那希支志身農はて盤 逢ふ瀬をよ處耳きヽ渡利つヽ」

鑑賞:かつて資盛と頻繁に逢っていた頃は、七夕の織女に同情したが、資盛とまれにしか逢えない時は共感し嘆いていたものだ。ところが、今では恋人とこの世で逢うことができなくなり、悲しくつらい身の上となってしまった。

歌意は「七夕の、はかない逢う瀬に同情し織女のように稀にしか逢えないあの人との契りを嘆いたこともあった。今では、年に一度の逢瀬すらよそのこととして聞くよになった。」

参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社