七夕の日にちなみ五十一首を(1)建礼門院右京大夫集から

1.天の河に

七夕には歌を詠む習わしがあった。作者は少々と謙遜しながら五十一首の歌をアンソロジーのように書き記す。

釈文:「年々、七夕に歌をよみてまゐらせしを、思ひ出づるばかり、せうせうこれも書きつく。」

選字は「年々七夕にう多越よみ弖まゐらせしを於も日出つ流者利勢うせう故連毛か支徒久」

鑑賞:現代では短冊に願い事を書くようになったが、かつては梶の葉に書き、星に手向ける風習があった。「天の河 と渡る舟の 梶の葉に 思うことをも 書きつくるかな」 『後拾遺集』 上総乳母

これは「梶の葉」と天の河を漕ぐ「梶」にかけて牽牛と織姫の再会を願ったことから。「天の河梶の音きこゆ彦星と棚機女と今夕あふらし」『万葉集』柿本人麻呂

参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社