ある心地よい春の日、物思ひにふける(3)建礼門院右京大夫集にて

3.次から次へと

釈文:「つきもせず 憂きことをのみ 思ふ身は
    晴れたる空も かきくらしつつ」

選字は「徒支毛勢寸う幾こと越の三思布
    美者は連多類空も可支供らし
               都ヽ」

歌意は「次から次へと限りなく続く、憂いつらいことばかりを思っている私には、晴れわたった空を見ても、涙で曇って嘆いてばかりいる。」

鑑賞:「つつ」継続や反復を示す接尾辞。気持ちがいつも沈んでいる作者には、晴れ渡った空や小鳥の鳴く声も我が身に引き比べてうらやましく思う。それゆえに涙でけしきもぼんやりと霞む。

参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社