ゆれ動く心を胸に抱きつつ(2)建礼門院右京大夫集より
2.五月でなくても
釈文:「こととはむ 五月ならでも たち花に
むかしの袖の 香はのこるやと」
選字は、「こ度ヽ者無佐つ支奈羅て毛多遅花
耳む可志能袖の香は農こ類やと」
歌意は、「橘の木にたずねたいのです。五月の橘はむかしの人の
袖の香りがするといいますが、季節が違っても恋しい
あの人の香りが残っているのでしょうか。」
鑑賞:「さつき待つ花橘の香をかげばむかしの人の袖の香ぞす
る」『古今集』(読み人知らず)に依拠しています。
参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社