大原に建礼門院を訪ねて(6)建礼門院右京大夫集より

6.秋も深くなり

建礼門院右京大夫集 祥香書

釈文:「秋深き山颪、近き梢にひびきあひて、筧の水のおとづれ、鹿の声、虫の音
    いづくものことなれど、ためしなきかなしさなり。」

選字:「秋深(四)
    き山阿らし(颪・おろし)近支梢耳日ヽ幾あひてか希日

    の水農於とつ連鹿の声虫の音い徒久も乃
    こ登奈れと多免志奈支か那しさな利」

大意は、「秋が深まり山から吹きおろす風、近い梢に響き合って、かけひを伝う水の
     訪れ、鹿の声、虫の音いつもの秋の山里の光景ではあるけれど、私には、
     例のないかなしさに思われます。」

 参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社