逢瀬を重ねた思い出の地・北山は(3)建礼門院右京大夫集を書いて
3.手入れされた庭は

二人で通い慣れた北山の邸跡へ一人で出かけてみたものの、作者の目に映った景色は、
釈文:「面影は先立ちて、またかきくらさるるさまぞ、いふかたなき。みがきつくろ
はれし庭も、浅茅が原、蓬が杣になりて」
選字は、「面影は先立ち弖ま多か
支倶らさるヽ佐ま處い布可多那支み可き
徒久呂盤れ志庭も浅茅が原蓬可杣爾
奈梨弖」
鑑賞:「浅茅」は丈が低いチガヤです。この例歌が万葉集六・九四〇
『印南野(いなみの)の浅茅推しなべさ寝る夜の日長くしあれば家し偲はゆ』
このように万葉集では秋の訪れの季節感を表すことが多かったのですが、
平安時代になると恋人の心変わりをあらわるようになります。
「蓬」は草の名。『源氏物語』以降は荒れた淋しい家を象徴する語として用いら
れるようになります。
参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社