夏深きころ蜩とともに(2)建礼門院右京大夫集から
2.我が袖ひめや
強い日差しによれたような竹の葉を見て、作者は「我が袖ひめや」という万葉集の一節を
思い出します。慣れ親しんだ文学的素養は、作者を支えてもいるのでしょう。
釈文:「『我が袖ひめや』と、またかきくらさるるに、蜩は繁き梢に、かしがましきまで
鳴き暮らすも、友なる心地して、」
選字は、「我が袖ひ免やとま多か支九ら沙るヽ爾
飛倶らし八志希き梢耳可四かま志
支万傳奈き暮須毛友なる心ちして」
鑑賞:万葉集第十巻「水無月の土さへ裂けて照る日にも我が袖干(ひ)めや君にあはずして」
意味は、「土がひび割れでしまうほどの日照りの太陽でも、私の袖は乾くでしょうか。
あなたに逢わないから。」
自らの境遇と、古の恋歌を重ね合わせて、時期は旧暦水無月の六月と晩夏と異なりながらも、
思いを寄せています。
参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社