資盛を弔い源氏物語を思い出して(7)建礼門院右京大夫集を書く
7.玉の緒も
「かばかりの 思ひにたへて つれもなく
なほながらふる 玉の緒も憂し」
選字は、「可は閑り農思ひ二多遍て徒連も奈久
難本奈可羅布る玉の緒も憂し」
歌意は、「これほどの悲しみに耐えて、なおも生き永らえている自分の命がつらく
思われます。」
鑑賞:「玉の緒」は「魂の緒」の意でいのち、生命。
作者は、資盛の菩提を弔うのは自分だけであると思い、手紙をすき直して、
涙をこらえながら写経をし納め、阿証上人に供養をお願いしました。
一方で、源氏物語などを思い出して自らの境遇を重ね合わせていることに
引け目も感じているのです。それは、飾り立てた言葉を「綺語」として、
仏教では真実に背いた十悪の一つとされているからでしょうか。
参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社