昔の資盛からの手紙をすき込んで(3)建礼門院右京大夫集を書くこと
3.資盛の古い手紙を
平家一門にゆかりのある方々は、弔いも公にはままならず、つらい思いをされている
ことだろうと思い、自分が資盛のためににお弔いをせねばという気持ちになります。
「など、身一つのことに思ひなされて、悲しければ、思ひを起こして、
反故選りい出して、料紙にすかせて、経書き、またさながら打たせて」
選字は、「奈と身一つの
こ登二思ひ奈沙連て可那し希れ者
思ひを起して反故え里い多志天料紙二
須可し(せ)て経書き万たさ奈閑ら打多せ
て」
鑑賞:「料紙」は、書などに用いる雲母や綺羅などをすき込んだ華やかな紙ではなく
「用紙」の意味です。お経を書写するために、資盛の古い手紙をすきなおさせて
用いています。
大切な思い出として、手紙を身近くに置いておきたいところですが、資盛の極楽浄土を
願い、写経用紙にすきなおさせる場面は胸に迫ります。
参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社