昔の資盛からの手紙をすき込んで(4)建礼門院右京大夫集を書くこと

4.文字が透けて見えるのも

建礼門院右京大夫集 祥香書

昔の手紙をすき込んだ紙からは、文字が透けて見えています。それを見た作者は、
「文字の見ゆるもかはゆければ、うらに物を隠して、手づから
 地蔵六体墨描きに描きまゐらせなど」

選字は、「文字の見ゆるもか者遊希れ盤う良
     耳物を可供して手徒可羅地蔵六体
     墨描支に可支ま井ら勢奈と」

大意は、古い手紙を紙に漉かせましたが、文字が見えるのも切ないので、裏にまた
    別の紙を当てて、自ら地蔵六体を墨書しました。地蔵六体とは六道で衆生

    を救うという六種の地蔵、延命、宝処、宝手、持地、宝印手、堅固意の六体
    をさすという説の他異説もあります。

鑑賞:「文字の見ゆるもかはゆければ」現代では、「かわゆい」を「かわいい」と
    連想しそうです。一説に「かはゆし」は「かおはゆし」顔がほてる気持ち
    の意から顔をまともに見られない、転じて「痛々しく思う」の意味です。

    ここでは、紙を漉き直しても手紙の文字が見えるのを痛々しくて、まともに
    見られないということです。

 参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社