さっぱりとして欲が無く(3)五言律詩を書く

3.夕暮れ時の

晩歸故園二首 祥香書

倚杖寒山暮
 鳴梭秋葉時


書き下し文は、「杖に倚る 寒山の暮
        梭(ひ)に鳴る 寒山の暮」

鑑賞:二行目では「倚」を大きく展開して見せ場をしています。「寒」を
   小さく書き「山」はしっかりと太めの字でどっしりと支えます。
   「秋」は普通はあまり使わない文字ですが、「秋」の古字です。

   「葉」は他の王鐸の書を参考にして、二行目の「倚」と呼応させてい
   ます。「時」は対照的に動きにブレーキをかけるように傾いています。

現代語にすると、「寒々とした夕暮れ時の山に杖をついてやってくると、秋
の葉が音をたてて散っていきます。

 参考文献:漢詩と名蹟 鷲野正明著 二玄社