あの人のことを全て忘れたいけれど(2)建礼門院右京大夫集を書きながら

2.あの人の思い出が染み付いて

建礼門院右京大夫集 祥香書

釈文「ただとかく、さすが思ひなれにしことのみ忘れがたさ、いかでいかで今は
   忘れむとのみ思へど、かなはぬ、かなしくて、」

選字は、「多ヽ度可久沙春
     可於も日な連二しこと能身わすれ可
 
     堂さい可弖意か天今は忘連無との
     み思へと閑那者ぬ可奈し久て」

大意は、「ただとにかく、あの人の思い出が心に染み付いて離れない。どのようにした
     ら忘れられるだろうかの思うけれども、できないのがかなしくて」

鑑賞:作者は言葉を繰り返して心のひだの、恋人の思い出を訴えるので、同じ語音
   の言葉がよく見られます。例えば、「かなはぬ」「かなしくて」と言うように。
   その場合同じ文字を選ばないことで変化が生まれるようにしています。

 参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社