資盛がひとり占めした梅の花に出会う(4)建礼門院右京大夫集を書く
4.誰かと問えば
親しい方に連れられて見事な梅の花を見に出かけると、毎年たいそう愛でたお方がおいでにならずあわれです、と僧侶が告げます。その人とは、
「『たれぞ』と問ふめれば、その人としもたしかなる名を言ふに、かき乱れかなしき心のうちに」
選字は、「多連曽と問ふ免れ者所の
ひとヽし裳た四可那る名を言布二
か支美多連可なしき心のう地爾」
現代語にすると、「『どなたですか』と連れが尋ねたようですが、確かにあの人の名を告げたので、私の心はかき乱れかなしい気持ちになり」
鑑賞:「問ふめれ」の「めり」は助動詞で動詞および動詞型活用語の終止形につきます。こちらは婉曲用法で〜のようであるの意味。
参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社