資盛がひとり占めした梅の花に出会う(3)建礼門院右京大夫集を書く

3.毎年この花を一人占めした方は

建礼門院右京大夫集 祥香書

梅の花がとても美しいとことがあるのよ、と連れられてきた所は、
「その所のあるじなる聖の、人に物言ふを聞けば、『年々この花をしめゆひてこひたまひし人なくて、今年はいたづらに咲き散り侍る、あはれに』といふを、」

選字は、「所のとこ路のあるし難る聖の人爾物
     言ふ越支介は年々この花をし免
     遊日てこひ多ま非し人奈久て今年八

     い多徒ら耳咲き散り傳るあ者禮爾
     登い布越」

現代語にすると、「その場所の主の僧侶が連れに話しているのを聞くと、『毎年この花を一人占めにして愛でてらした方がおいでにならず、今年はただ虚しく咲き散ってしまいました。しみじみとあわれです、と言うのを。」

鑑賞:「しめゆふ」は「標(しめ)結(ゆ)ふ」と書き、占有を示す標識として、縄などを結んで巡らす。また、草などを結んで目印をつける、意味です。
万葉集二四六六に「浅茅原小野にしめゆひ空言をいかなりと言ひて君をし待たむ」

 参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社