あの人はどこでこの月を眺めているのだろうか(4)建礼門院右京大夫集を書きながら
4.雲のたたずまい
深まりゆく秋の景色に、いたたまれない心地でいた作者は、空を見上げ旅先であてのない暮らしを続ける資盛を思い、悲しみにくれます。
「月の明き夜、空のけしき、雲のたたずまひ、風の音ことにかなしきをながめつ
つ、ゆくへもなき旅の空、いかなる心ちならむとのみ、かきくらさる。」
選字は、「月の明支夜
空の希志記雲の多ヽすまひ風のおと
ことにかなしき越奈可免徒ヽゆ具
遍もな支旅の空い可那る心ち奈ら无
と能三か支倶らさる」
鑑賞:「雲のたたずまひ」の表現ですが、『源氏物語第十九帖薄雲』に
「天つ空にも例に違へる月日星の光見え、雲のたたずまひあり」とあり、
不思議な現象を凶兆と解釈する例がみえます。*①このことから、暗に
これから資盛の身に起こる事柄を語っているかのようです。
出典:*①genji-monogatari.net