高倉院崩御の知らせを聞いて(4)建礼門院右京大夫集を書く
4.ある女房の歌
亡くなられた高倉院を思い、一首を詠みました。
「雲のうへに ゆくすゑとほく 見し月の
ひかり消えぬと 聞くぞかなしき」
選字は、「雲のう遍耳遊久春衛と本具
美し月乃飛可梨きえ努と支
久處か那し支」
鑑賞:この歌は『平家物語 巻六新院崩御』に澄憲法印の歌「常に見し君が御幸を
今日問へば帰らぬだけと聞くぞ悲しき」につづき、「また、ある女房、君隠
れさせたまひぬと承って、かうぞ思ひ続ける。」という詞書の後に紹介され
ています。
現代語にすると、宮中で末長くお栄えなさると拝見していた上皇様が、お隠れになられたと耳にするのは悲しいことです。
度重なる政変による天下の有様に心を痛められ、高倉院のご病気は重篤になり、
ついに帰らぬ身となられました。人々の快癒の願いも虚しく、無常な人の世の無情が表れています。
参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社