重衡は建礼門院右京大夫に思いを(3)建礼門院右京大夫集から
3.同じ一門の方とは
縁のある身ではありませんか、と重衡に思わせぶりのことを言われ、いつも
言い寄られていた作者は、次の歌を詠みます。
「濡れそめし 袖だにあるを おなじ野の
露をばさのみ いかがわくべき」
選字は、「ぬ連楚免志曽傳多耳あ流を
於奈し野の徒ゆを者佐のみい可ヽ
王倶へ支」
鑑賞:「おなじ野の露」資盛と同じ平家一門ゆかりの重衡のこと。
「野」は「草のゆかり」を連想させる「武蔵野」。
「わくべき」は草深い野原に分け入ることができるでしょうか。
『玉葉集』に入集しています。
歌意は、思い人のとの恋に涙で濡れていますのに、同じ一門の方とお付き合い
をして、また悲しい思いを重ねることができるでしょうか。
参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社