平重衡は茶目っ気たっぷりに(2)建礼門院右京大夫集を書いて
2.恐いので着物をかぶって
重衡の宮中での行いが詳しく書かれ、親しまれる人柄であったことがわかります。
「はてはおそろしき物語りどもをしておどされしかば、まめやかにみな汗になりつ
つ、『今は聞かじ、のちに』といひしかど、なほなほいはれしかば、はては衣を
ひきかづきて、『聞かじ』とて、寝てのちに心に思ふこと、」
選字は、「者て盤お曽路し支物語りともを志傳おと
沙連し可盤ま免や可爾み奈阿せ爾
な利つヽ今はき可志能遅耳登い日し可
と奈ほヽヽい者連四可はヽて者衣をひ支
か徒支て支可志とて年傳の遅に心爾
於もふこと」
大意は、しまいには恐ろしい物語りなどをして、おどかされたので、本気になり皆が
汗をかきながら「今は聞かないわ、後で」と言っても、なおもお話になるので、
最後には、着物をひきかぶって「もう聞きませんよ」と寝てしまった後に次の
ように思いました。
宮中で平穏な頃の微笑ましい一幕であったと後から思い起こされるエピソードですね。
参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社