心が体からはなれて(1)建礼門院右京大夫集を書く

1.夕暮れになると

建礼門院右京大夫集 祥香書

なんとなく、物思いにふけっていると思い出すのはあの人のことで、
 「なにとなく、ねやのさ筵うちはらひつつ、思ふことのみあれば、

 夕されば あらましごとの おもかげに
 枕のちりを うちはらひつつ


選字は、「な爾と那久年やのさむし路う遅
     盤ら飛つヽ思布こ登のみあれ者

  遊布され者あ羅ましこ登の
  お裳かけ爾枕の遅利う千波ら日つヽ」

意味は、なんとなく寝所の敷物を払いながら、思うことがあって、
   夕暮れになると 今宵はきっと訪ねてきてほしいと願い、枕紙についた
   塵を何度も払うのです。

鑑賞:「あらましごと」とは予想されること。『源氏物語 総角』に「亡からむ
    後のあらましごとを」とあり、(死後の予測される事柄を)の意味です。
    ここでは、こうあってほしいと作者が願っていることです。

参考文献:学研全訳古語辞典
     建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社