かつての小宰相を偲ぶ(3)建礼門院右京大夫集から
3.小宰相の美しさといったら
「とりどりに見えし中に、小宰相殿といひし人の、びんひたひのかかりまで
ことに目とまりしを、としごろ心かけていひける人の、通盛の朝臣にとら
れてなげくと聞きし。げに思ふことわりとおぼえしかば、その人のもとへ」
選字は、「とり登利に
見えし中爾小宰相殿といひ志人の飛ん
ひ多日の閑可りまて故と二目耳登万利
しを度志こ路心可希傳い日介流
日との通盛乃朝臣爾と羅連て奈希久
と起し介に思布もこ登わ里と於本
え事か者曽乃人の毛とへ」
鑑賞: 上西門院の女房であった小宰相は、宮中随一の美人と言われていました。
通盛は、小宰相が十六歳の頃に見初めて三年もの間、文や歌を送り続け、募る
思いを伝えていたものの、小宰相は歯牙にもかけなかったのです。ある時、使い
の者が投げ入れた文がひょんなことから、上西門院の目に留まり、お二人の
縁を取り持ってくださいました。
一方で、作者は以前から小宰相に思いを寄せていた人と知り合いであった
ことから、さぞお嘆きでしょうと思いやり歌を送りました。
参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社