恋の山路に迷う身には(4)建礼門院右京大夫集から

4.恋の山、は山

建礼門院右京大夫集 祥香書

思ひかへす 道をしらばや 恋の山
 は山しげ山 わけいりし身に


選字は、「於も日可遍寸三遅越しら盤や
     恋の山者や万し希山わ介い里四
                 身爾」

鑑賞:「恋の山」は積もる恋を深い山にたとえていう語。また、恋の迷いを踏み迷う山路にたとえる。(広辞苑)
「は山」は端山で連山のはしの方にある山。麓の山をさします。
「しげ山」は繁山で草木が生い茂った山。

「恋の山には孔子(くじ)の倒れまねびつべき気色に愁えたるも、さる方にをかし」『源氏物語』胡蝶、に用例が見られます。「孔子の倒れ」とは、聖人でも失敗することがあるというたとえで、恋の山はそれほど難しいということでしょう。

参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社