揺れうごく女こころの吐露(5)建礼門院右京大夫集に親しんで
5.ほんとうにね
夢にみているように私の心は想っているあなたの元へ通っているでしょうと隆信の歌に、作者が返した歌は、
「げにもその 心のほどや 見えつらむ
夢にもつらき けしきなりつる」
選字は、「け爾毛楚乃心の保とや見えつらむ
遊免耳も徒らき希志支難利つる」
歌意は、「本当にあなたのお心のころあいが見えるようです。夢に現れたあなたは、現実と同じようにつれないご様子でしたもの。」
これらの歌は『玉葉集』に、前右近中将資盛と建礼門院右京大夫との贈答歌として収められていますが、これまでの経緯から隆信との贈答と考えられます。*①
こちらの気持ちに答えてくれずに、薄情な隆信には作者の歌も届かないのでしょうか。
*出典:① 建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社