和歌一首を背景と共に味わう(3)関戸本古今集より
3.枕草子にみる
『枕草子』第二十三段「清涼殿の丑寅のすみの」の中で、この和歌が登場します。
ある時、中宮定子様が硯ですみを磨りなさいと命じられたのち、ここに覚えている古歌を書くように仰せになった。あたふたとして、伊周殿に渡したりしていたが、なおも催促されたので、
「年ふればよはひは老いぬしかはあれど花をしみればもの思ひもなし」というところを、
『君をし見れば』と書いてお渡しした。中宮様は、こういう機転のきく歌がほしかったのよ、と賞賛された。
古今和歌集は、すぐに手の届くところに置き、暗唱されていたと聞きますが、当意即妙なお答えはさすが清少納言と思われます。墨をする方がいらしたり、宮中の雰囲気が伝わるエピソードであると思います。
参考文献:枕草子 池田亀鑑校訂 岩波文庫