和歌一首を背景と共に味わう（4）関戸本古今集より

4.としふればの鑑賞

鑑賞のポイントについて書きましょう。
かなでは左には流れずに右へ自然に移行していく傾向があります。一行目は左右の動きから、一行目の終わりでは「ぬし」と流れています。

二行目は、徐々に文字の左右の幅に変化をつけながら、「花」で墨を含めて大きく書かれています。関戸本古今集は、墨がなくなった頃に含墨していますので、このように和歌の途中で墨つぎをすることになります。

「花」は華やかな字の形と、四方へ広がりを持ち、空間に働きかけています。それが「し」につながって効果的に下の文字を支えています。三行目は動きもよく次々と右の下方向へ移行していく様がわかります。

参考文献：関戸本古今集　桑田三舟編　二玄社