和歌一首を背景と共に味わう(2)関戸本古今集より

2.藤原良房とは

関戸本古今集 祥香臨

 この歌の作者藤原良房と深い関わりがある染殿の后は、権力を掌中に収める上で重要な役割を果たすことになる娘です。平安初期の貴族で、冬嗣の次男として生まれた良房は、文徳天皇の即位後、外戚として勢力を得ることに成功します。

さらに娘明子のお子である清和天皇が九歳で即位すると、人臣として初めて摂政太政大臣の地位にのぼりつめます。ここで、政権獲得の野望がついに実現したことになります。

舞台は、良房晩年の春の日、花瓶に挿した桜花の美しさと、天皇の生母として今をときめく明子の姿が重なり感慨深い良房です。実感にあふれた、自然な歌はゆったりとした味わいがあります。

次回は、この歌が枕草子にも引用されていることをご紹介しましょう。
 参考文献:和歌の解釈と鑑賞事典 井上宗雄他編 笠間書院