かつて、あなたにお逢いした時(1)建礼門院右京大夫集から
1.ほととぎすの声が
今回は、全体を見通して流れを感じられるよう、横長に書きました。詞書は和歌のニ字分下がっています。
「おなじ頃、夜床にてほととぎすを聞きたりしに、ひとり寝覚めに、またかはらぬ声にて過ぎしを、そのつとめて文のありしついでに、」
選字は、「おなしこ路よ登こ爾てほとヽ
き須を支ヽ多里しニひと利年
佐免爾ま多か者羅ぬこゑ耳て
春きし越曽の徒と免てふ三
の阿利志い弖ニ」
鑑賞:詞書は、行間をあまりあけずに、隣の行との響きあいを意識しています。同じような文字が並ばないことも大切です。
大意は、隆信に正妻が決まるという噂を聞いた頃、彼との逢瀬に二人でほととぎすを聞いたことがありました。その後、一人で目を覚ますとほととぎすが変わらない声で通り過ぎます。翌朝、隆信からのお便りのついでに送りました。
参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社