名誉と知識は人を不幸に陥れることがある(4)荘子から解く

4.他人の悪事を種にして

お前は、まだ他人の気持ちがわかっていないようだね。それなのに衛の国へ行ったのなら、
 「而彊以仁義縄墨之言術暴人之前者
  是以人惡育美也


書き下し文は、「而も彊(し)いて仁義縄墨の言を以って暴人の前に術(の)ぶる者は、是れ人の惡を以て其の美を育(ひさ)ぐなり。」

意味は、(お前はまだ人の気持ちが分かっていないのに、)無理に仁義道徳のことばを乱暴者の前で言い立てるというのでは、他人の悪事を種にして自分の立派さを売り込むものである。

人の気持ちが分からないと、ただ自分の優れていることを述べ立てることになってしまう、というのは至言です。この点に気づかずに良かれと思って他人にもっともらしい忠告などをしてしまうことがあるのではないでしょうか。

 参考文献:荘子 金谷治訳注 岩波書店