思いもしなかった所で言い寄られて(5)建礼門院右京大夫集を書く
5.あなたが心を寄せている方は
返し歌の二首のうちのもう一首が、
「もしほくむ あまの袖にぞ 沖つ波
心をよせて くだくとはみし」
選字は、「裳しほ久無あ満の處て爾曽沖つ波
こ路をよ勢弖具多供と者見志」
歌意は、藻塩を汲む蜑(あま:海で魚介などを取り生計を立てる者)の袖は砕ける波で濡れるように、あなたの思い人はあの尼さんなのではありませんか。
ちょっと当て擦りのような歌に変わっているのは、興味深いです。もっとも、波で袖が濡れるといわれたので、「蜑」と「尼」をかけて、からかいの気持ちがあるのかもしれません。
参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社