一緒に踊り明かしましょう(1)良寛歌集より
1.風はさわやか
踊り好きであった良寛さんがよく表れている歌です。
「風は清し 月はさやけし いざともに
踊りあかさむ 老いのなごりに」
文字も踊っているかのように、動きがよく流れています。
「閑勢波幾餘之
徒き者散や気之
い散東裳爾お東
利安可散無おい乃
那こ里耳」
文字の選び方は、秋萩帖を習っていたため草書が主体の草かなで書かれています。一行目の「閑」を終画の点で大きく広げ、次の「勢」で左に働きかけています。「波」では下部をすぼめて「幾」につなげています。「餘」は大きく展開して「之」で収めています。
これだけ草書を並べますと、通常はうるさく感じられるものです。ところが、良寛は字の大小や、下の文字を受ける位置を変えることで動きを出すばかりでなく、軽やかさも生み出しているのです。
一行目だけを見ても、左から右へ、そして下への動きがステップを踏むように感じられます。
参考文献:良寛歌集 渡辺秀英著 木耳社