良寛さんの秋を書く(2)良寛歌集より
2.黒坂山の麓に
次の和歌は、「黒坂山の麓に宿りて」と題されたものです。
「あしひきの黒坂山の木の間よりもりくる月の影のさやけさ」
選字は、「阿之悲き能久ろ散可や萬能古能末よ里
も里久留徒き能閑気能さやけ散」
黒坂山は、三島郡和島村上桐の東にあり、親友の小黒小兵衛宅で作られました。この歌の後も歓談は終わらず、「あしひきの黒坂山の木の間よりもりくる月をよもすがら見む」と詠まれています。
また、この歌から「木の間よりもりくる月の影見れば 心づくしの秋は来にけり」読み人知らず(古今和歌集・巻四・秋歌上・184)を思い出します。秋になりますと、虫の音、草花、鹿、紅葉といった自然のあふれる営みの中で、ひときわ趣が感じられるのが月でしょう。
夜も次第に長くなり、そぞろ歩きにも適した季節ならではの良寛の歌となっています。
参考文献:良寛歌集 渡辺秀英著 木耳社