世間から取り残された自分は(5)漢詩を書く

5.流れにまかせて

韋応物 祥香書

『荘子』列御寇に「巧者労而知者憂、無能者無所求、
         飽食而□遊、汎若不繋之舟、虚而□遊者」

読み下し文は、「巧者は労して知者は憂う。無能者は求むる所無く、飽食して□遊し、汎として繋がざる舟の若く、虚にして□遊する者」
                        (□は不詳)
繋がれていない小舟のように、「無能者」は漂い、虚心坦懐としてこの世に遊ぶことを、荘子は例えて述べています。

世間から一人取り残された我が身を、韋応物は、厭わず流れに身を任せて、その地で生きていくという心持ちなのでしょう。ただ流れに身を任せる心境は老子の「無為」にも通じるところです。

 参考文献:漢詩と名蹟 鷲野正明 二玄社