大河が浮き草を浮かべて(2)酒徳頌を董其昌が書く

2.長江や漢水

酒徳頌巻 董其昌 

焉如江漢之載浮萍
読み下し文は、「江漢(こうかん)の浮萍(ふへい)を載(の)するが如し。」

「江漢」:長江と漢水。漢水も大河の名。
「浮萍」:うきくさ。*①
現代語にすると、長江と漢水のような大河の上に、浮き草を置くようなものだ。

董其昌の書き振りは、変化に富んでいます。二行目の中程に「焉」と「如」を続けて書き、女偏の一画目を省略しています。次に「江」への連綿では、柔らかく反動を使いながら、氵(サンズイ)につなげていきます。

こうした董其昌の手腕は、彼が『行草書巻』において、草書の連綿を滞りなく、思うままに書いていることからもわかります。かな書にも通ずる流れながらの重心の移動を難なく成し遂げているのです。

出典:*① 監視と名蹟 鷲野正明 二玄社