董其昌の書(4)酒徳頌を味わう

4.全世界が庭

董其昌 祥香臨 二玄社

日月為扃牖、八荒為庭衢行無轍跡、居無室盧

読み下し文は、「日月を扃牖(けいゆう)と為し、八荒を庭衢と為す。行くに轍跡無く、居るに室盧無し。」

扃牖:かんぬきと窓、門と窓。
八荒:八方の果て。転じて全世界。
庭衢:庭。図版は「衢」が「除」になっている。*①

意味は、太陽と月を門や窓のようにみなし、全世界を庭のように見ている。行くときには車のわだちができないように、人の足跡が残らないようにし、住むにも人知れず、その家も明らかでない。

この中の「行無轍跡」は『老子』に由来するので次回に後述します。
 *出典:① 漢詩と名蹟 鷲野正明 二玄社