春のおもしろみ(2)声に出したい和漢朗詠集

2.ゴサマアの糸

粘葉本和漢朗詠集 二玄社 祥香臨

二句目、「野草芳菲紅錦地
     遊糸繚乱碧羅天


読み下し文は、「野草芳菲たり 紅錦の地
        遊いと繚乱たり 碧羅の天」

「遊糸」は、かげろふのこと。ガサマア、蜘蛛の子が糸に乗じて空に浮かんで流れる現象。

意味は、春の野草が咲きそろい香り立っている、紅の錦を地面に敷き詰めたようです。空には、ガサマアが流れ乱れて、エメラルドのように澄んだ薄絹のようです。

作者の劉禹錫は、白居易と同時代の中唐の詩人で、これも彼に贈ったものです。

冬の色の無い世界から、少しずつ彩りが増してくる様子がありありと浮かぶような詩です。
 参考文献:和漢朗詠集 川口久雄 講談社