維盛北の方との交流(1)建礼門院右京大夫集

1.北の方とは縁があって

建礼門院右京大夫集  祥香書

維盛は平家の武将であり、公達の中でも姿も麗しくほれぼれするような方でした。北の方は、権大納言藤原成親(なりちか)の娘で、成親は鹿ヶ谷の合戦で平家討伐を謀議して捕らえられました。

北の方と、建礼門院右京大夫とは縁故があったらしく、歌の贈答など親密なやりとりが残されています。このときも、薬玉をくださって

  「君に思ひ 深き江にこそ ひきつれど
   あやめの草の 根こそあさけれ」

用字を「幾み璽於も日布可記え二故處
    比支徒連とあや免のく佐農年
    こ所阿さ介連」

深いご縁のある貴方をお慕いして、深い入り江で抜いた菖蒲の根ですが、私の思いに比べたら大したことはありません、と情愛をかけた歌を贈っています。

 参考文献:建礼門院右京大夫集 新潮社