菖蒲は邪気を払うので(5)建礼門院右京大夫集

5.慰めてくれた人へ

建礼門院右京大夫集 祥香書

つらいことがあり、ひき籠っていた折に菖蒲の根を贈ってくださった方へ詠んだ歌が、

  「あやめふく 月日もおもひ わかぬまに
   けふをいつかと 君ぞ知らする」

用字を「あや免布く月日も於毛ひ王可
    努ま耳遣婦をい徒可登支みそ
    し羅寸る」

歌意は、「菖蒲を葺く日にも気づかずにいた私に、今日は五日ですよと教えて、菖蒲の根を贈ってくれたあなたです。」

このとき、作者は母を亡くして、悲しみにくれていたと思われます。菖蒲の根の贈答は、長寿の祈願のみならず、人への心遣いとしても行われていたのです。

 参考文献:建礼門院右京大夫集 新潮社