月は所によって明るい他(2)建礼門院右京大夫集

2.関をへだつ恋

建礼門院右京大夫集  祥香書

「へだてがあって会い難い恋」の題で恋を詠んでいます。

  「恋ひわびてかくたまづさの文字の関
   いつか越ゆべき契りなるらむ」

書いたところでは、「恋ひ王飛てかくた万川散の毛
          し乃関意徒可越ゆへ支
          契利なり羅無」

この歌のポイントは、「文字の関」です。これは、手紙を書いても届かないもどかしさを意味し、「門司の関」と掛詞になっています。選字では、「文字」と書かずに、「毛し」としたことがここで生きてきます。

現代では、漢字とカナが混ざり合って使うことが常識なので、異なる字を選ぶことに違和感を覚えるかもしれません。でも、ことばは様々な意味を有し、関連のある文字と掛け合わせていることがままあるのです。

 参考文献;建礼門院右京大夫集 新潮社