朝霧のようにおかくれに(2)-建礼門院右京大夫
2.法華経の第五巻とは?
今回は、始めから四行目半ばまでです。
釈文は「故建春門院の御ために、御手
づから御経書かせおはしまし
て、内裏にて御八講おこなは
れし五巻の日」
天皇がご自分で法華経を写経なさいまして、宮中で御八講(法華経八巻を朝夕一巻ずつ四日間講義し説明する法会)が行われました。
(イ)法華経第五巻には、悪人成仏と女人成仏を説く提婆達多があります。
いわゆる『女は三界に家無し』などと言われ、女人が悟りを開くことは、難しいと考えられていました。
しかし、法華経第五巻の提婆達多には、八歳の少女が即座に悟る様子が書かれています。
このことから、故建春門院の法会に読まれたと思われます。
ちなみに、提婆達多は釈迦牟尼の従兄弟で弟子となりながら背いた人物です。
仏教の修行をしていない少女であっても悟りを得る、このことに年齢や性別、修行の有無は何ら関係がないことを示しています。
それは、あまねく行き渡っている今の様子、そのものであるからです。
参考文献:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社