宮人の御衣裳はすばらしい(5)-建礼門院右京大夫

5.私の気持ちはこんな感じ

建礼門院右京大夫集  祥香書

後半の釈文を記します。
「宮は、つぼめる色の紅梅の御衣、樺桜の御表着、柳の御小袿、赤色の御唐衣、みな桜を織りたる召したりし、にほひ合ひて、いまさらめづらしくいふかたなく見えさせ給しに、おほかたの御所の御しつらひ、人々の姿まで、ことにかがやくばかり見えしをり、心にかくおぼえし。

  春の花 秋の月夜をおなじをり 
   見るここちする 雲のうへかな

現代語訳:中宮は、つぼみ紅梅(表に紅梅、裏蘇芳の色目)の御衣、樺桜(表蘇芳、裏紅色)の御表着、柳(表白、裏青)の御小袿、赤色(ねずみ色がかかった赤色で、禁色)の御唐衣、すべて桜を織り込んだお召し物で、とりどりの色が互いに映えて、今になってまた、すばらしく言いようのないほど

と、お見うけした上に、あたり一帯の御所の飾りつけ、人々の姿まで、ひときわ輝くように見えました。このとき、私にはこう思われました。

  春の咲き匂う桜花、秋のさやかに澄む名月を
  同時に見るような すばらしい宮中であることです*①

建春門院や八条の二位殿の御衣装に対し、中宮の若さを映すような赤色と蘇芳色の連なりです。思い浮かべると、春というより夏の花を思わせる、日の光に負けないほどの強い色目に感じられます。

  *出典:建礼門院右京大夫集 糸賀きみ江校注 新潮社