こんな時こそ「愛語」(2)

2.愛語の全貌
良寛が「正法眼蔵」の中でとりわけ感銘を受けたと思われる「愛語」なので、下記に掲載していない前半を記します。

「愛語ト云フハ、衆生ヲ見ルニ、マヅ慈愛ノ心ヲオコシ、顧愛ノ言語ヲホドコスナリ。
ホヨソ暴悪ノ言語ナキナリ。世俗ニ安否ヲトフ礼儀アリ、佛道道ニハ珍重ノコバアリ、

不審ノ孝行アリ。慈念衆生猶如赤子ノオモヒヲタクハヘテ、言語スルハ愛語ナリ。徳アルハホムベシ、徳ナキハアハレムベシ。愛語ヲコノムヨリハ、ヤウヤク愛語ヲ増長スルナ

リ。シカアレバヒゴロシラレズ、ミヘザル愛語モ現前スルナリ。現在ノ身命ノ存スルアヒ
ダ、コノンデ愛語スベシ。世々生々ニモ不退転サラン。怨敵ヲ降伏シ、君子ヲ和睦ナラシムルコト、愛語ヲ本トスルナリ。向テ愛語ヲキクハ、ヲモテヲ・・・」*①

「人に接したとき、まず慈愛の心を起こし、いたわりの言葉をかける。それが愛語です。
愛語を聞くと、聞いた人の表情には喜びがあふれ、心が楽しくなると道元は言います。

でも、この愛語とは単なる優しい言葉のことではありません。愛語とは、相手をそっくりそのまま肯定する言葉のことです。あなたはあなたであっていいという気持ちを伝える言葉です。」*②

愛語とは、条件なしにそのままを受け入れる言葉ということです。相手を何の前提条件も無く容認することは、難しいと思うかもしれません。でも、我々一人一人がかけがえのないのですから、お互いをそのまま認め合うことから始まるのです。

正法眼蔵 愛語 道元 良寛書 祥香臨

                  *出典:① 良寛の名品百選  加藤僖一編著
                      ②正法眼蔵 道元  ひろさちや